2017/08/02

学校法人に関係する法令 1

  今回から3回に分けて「学校法人に関係する法令」について解説します。学校法人に関連する法令は多数ありますが、ここでは、特に関連性の深い学校教育法、私立学校法及び私立学校振興助成法を中心に解説します。
 なお、文中意見にわたる部分は筆者の個人的な見解であり、筆者が所属する法人の公式的な見解ではないことを申し添えます。

1 学校教育法
 ⑴ 学校教育法の概要
 学校教育法(法律第26号として昭和22年に制定) とは、日本国憲法に基づき、教育基本法(法律第25号として昭和22年に制定)を受けて、学校教育の具体的な内容を定めたもので、学校教育制度の根幹となる法律です。この法律で定める学校とは、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校(盲学校·聾(ろう)学校・養護学)、大学及び高等専門学校のことをいいます。学校教育法第1条に掲げられた学校なので、「1条学校」とか「1条校」と言われています。
 ちなみに、学校教育法第124条に規定する学校を専修学校といい、同法第134条に規定する学校を各種学校といいます。
各学校については、設置の目的や教育目標、修業年限、教職員の数等、基本的なことが、学校教育法によって規定されており、学校の種類に応じ、文部科学大臣の定める備、編制その他に関する設置基準に従わなければならないこととなっています。各学校法人は、このような一定の法が定める規定の下での運営が求められています。
 高等教育機関の質保証に関しては、大学等の設置を文部科学省が認可する制度のほか、自己点検評価や外部評価(第三者評価)の実施が義務づけられています。


⑵ 学校教育法の近年の改正点
  平成2741日施行の改正学校教育法のポイントのうち、学校法人に関連するものは次のとおりです。
 ① 副学長の職務(第92条第4項関係)
   副学長の職務は、これまでは「学長の職務を助ける」と規定されてきましたが、学長の 補佐体制を強化するため、学長の指示を受けた範囲において、副学長が自らの権限で校務を処理することが可能となっています。そして、より円滑かつ柔軟な大学運営を可能にするため、副学長の職務を、「学長を助け、命を受けて校務をつかさどる」に改めました。

 ② 教授会の役割の明確化(第93条関係)
   教授会の設置について、従来は「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない。」としていましたが、改正後において「大学に、教授会を置く。」とされました。教授会については、これまで「重要な事項を審議する」と規定されてきましが、教授会は、教育研究に関する事項について審議する機関であり、また、決定者である学長等に対して、意見を述べる関係にあることを明確化するため、以下のとり改正を行っています。

 イ)教授会は,学生の入学、卒業及び課程の修了、学位の授与その他教育研究に関する重要な事項で教授会の意見を聴くことが必要であると学長が定めるものについて、学長が決定を行うに当たり意見を述べることとしました。
 ロ)教授会は、学長等がつかさどる教育研究に関する事項について審議し、及び学長等の求めに応じ、意見を述べることができることとしました。 

 なお、大学を設置する学校法人には、文科省より「内部規則等の総点検・見直しの実について」通知(事務連絡 平成26829日 文科省高等教育局大学振興課)が発されています。大学設置法人においては、すでにこれらの事項は規定化されていると思いますが、今一度、教授会規程(規則)等の再点検が必要なことに留意する必要があります。

2 私立学校法
 ⑴ 私立学校法の概要
  私立学校法(法律270号として昭和24年に制定) とは、同法第1条にあるように、私立学の特性にかんがみ、その自主性を重んじ、公共性を高めることによって、私立学校の全な発達を図ることを目的として制定された法律です。 ここでいう私立学校の「特性」として、国公立の学校はいずれも、その経費の相当部分が公費によって補われるのに対し、私立学校は、私人の寄附財産等によって設立・運営されることを原則とする点が挙げられます。また、「自主性」として、私立学校が上記の特性により設立されたことに伴う、自律的な運営を行うという点が挙げられます。
これらの特性と自主性は、建学の精神や立地地域等の環境によって独自の校風が強調されると言えます。また、所轄庁の権限ができるだけ制限されているのも、これらの特性自主性に根差すものと考えられます。 

⑵ 私立学校法の一部改正(平成16年法律第42号)
 平成16年に55年ぶりに法人の機関制度などガバナンスのあり方が見直されています。
①理事、監事、評議員会制度の改善(第30条、第36条から第38条、第42条、第46条、第49条関係)、②財務情報公開の義務化(47条、第66条関係)、③私立学校審議会の構成の見直し(10条、第11条関係)などの大改正が行われ、平成1741日から施行されています。

⑶ 私立学校法の一部改正(平成26年法律第15号)
  平成26年には、学校法人の運営において極めて不適切な学校法人があるとして、文部科学事務次官通知(平成26年法律第15号 平成2642日改正公布・施行)により私立学校法の一部が改正されました。その趣旨及び概要は以下のとおりです。
①改正の趣旨
  平成25328日、文部科学省は運営が極めて不適切であった文科省所轄学校法人に対て、解散を命じるという事態が生じました(学校法人堀越学園(群馬県)に対する解命令について
   http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/1332589.htm)。
この事案では、法人の資産総額の変更登記が平成22年度決算から未了であったり、適正な計算書類等の作成・備え置きがなかったり、また監事の欠員、賃金の不払いなど多数法令違反が問題となりました。
  こうした事案に対して、私立学校の自主性を尊重しつつ、私立学校全体に対する不信感につながることがないように所轄庁が適切に対応するため、学校法人が法令の規定に違反したとき等に所轄庁が当該学校法人に対し、必要な措置をとるべきことを命ずることできる等所要の改正を行いました。 

②改正の概要
  ア 理事の忠実義務
  学校法人の理事は、法令及び寄附行為を遵守し、学校法人のため忠実にその職務を行わなければならないこととしました(40条の2関係) 従来、学校法人の理事と学校法人との関係は、民法の委任に関する規定に従うものとされています。すなわち、学校法人の理事は民法上の委任の趣旨に従って、善良なる管理者の注意義務(善管注意義務)をもって事務を処理することが義務づけられることとなります。しかしながら、例えば、 学校法人が無報酬の学外の非常勤理事との間で理事の善管注意義務の一部を免除する等の契約を行った場合、この理事が理事会における他の理事等の職務執行に対する監督義務を怠ったことで、学校法人に損害が生じても、その理事は何ら責任を負わないこととなる可能性があります。
  したがって、改正私立学校法では、このような特約によっても免除できない義務として、「理事の忠実義務」を規定して、すべての理事が社会的及び経済的地位等から考え通常期待される程度の注意義務をもって、理事としての職務を行うべきであることを明文化したと言えます。 

イ 所轄庁による必要な措置の命令等
  所轄庁は、学校法人が、法令の規定、法令の規定に基づく所轄庁の処分若しくは寄附行為に違反し、又はその運営が著しく適正を欠くと認めるときは、当該学校法人に対し、限を定めて、違反の停止、運営の改善その他必要な措置をとるべきことを命ずること(下「措置命令」という。) ができることとしました。(60条第1項関係)
 学校法人が措置命令に従わないときは、所轄庁は、当該学校法人に対し、役員の解任を勧告することができることとしました。(60条第9項関係)

所轄庁は、役員の解任の勧告をしようとする場合には、あらかじめ、当該学校法人の理事又は解任しようとする役員に対して弁明の機会を付与するとともに、私立学校審議会等の意見を聴かなければならないこととしました。(60条第10項関係) 

ウ 報告及び検査
  所轄庁は、この法律の施行に必要な限度において、学校法人に対し、その業務若しくは財産の状況に関し報告をさせ、又はその職員に、当該学校法人の事務所等に立ち入り、の業務若しくは財産の状況等を検査させることができることとしました。(631項関)

  前述した学校法人堀越学園(群馬県)における事案では、私立学校法上、所轄庁に必要な措置等を命じる権限がないため事態が混迷したという経緯がありましたが、本改正により所轄庁による措置命令及び報告・検査権限が明文化されたことで所轄庁の学校法人に対する権限が強化されたと言えます。


[参考]
学校法人財務諸規程ハンドブック(学校経理研究会)

                                           (永和監査法人 公認会計士 津村 玲)

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