2017/06/07

源泉所得税の具体的事例 1


 6月の学校会計のチカラは、源泉所得税と固定資産税について解説します。まずは今週から3回にわたり、学校法人で想定される源泉所得税の具体的事例をご紹介します。少しでも皆様の実務に役立てば幸いです。


- 教職員等の発明・考案に対して支給する報償金

 当学園では、教職員が職務上有益な発明・考案等を行った場合には、学園規程により、当学園の資金、施設又は設備等を用いて行った職務発明に関する特許等を受ける権利及びこれに基づき取得された特許権等は、原則として学園に帰属(発明・考案者から学園が権利を承継)することとしています。 

 しかし、その発明・考案者に報償金等を支払う制度はありません。そこで、今後は職務上の発明・考案等に対する報償金制度を設けて、金銭を支給することを検討しています。この場合に、課税の問題は生じるのでしょうか?

 A- 

1.課税関係の概要

 所得税基本通達23~35共-1(使用人等の発明等に係る報償金等)では、業務上有益な発明、考案等をした役員又は使用人が使用者から支払いを受ける報償金、表彰金、賞金等に関する税務上の取扱いを明らかにしています。
 

 結論から申しますと、給与所得、一時所得、譲渡所得、雑所得のうちいずれかの所得に該当し、所得税の課税対象となります。

 報償金等の支給内容により、それぞれの所得区分が変わりますが、その具体的内容は以下のとおりです。

2.報償金の具体的課税関係



1 発明等に係る特許を受ける権利や特許権の承継に対して支給する場合
 
 業務上有益な発明、考案又は創作をした人に対して、その発明、考案又は創作に係る特許、実用新案登録、意匠登録を受ける権利又は特許権、実用新案権、意匠権を使用者が承継することにより支給するものについては、次のように取り扱われます。
(1) 権利の承継に際し一時に支給されるもの …… 譲渡所得

(2) 権利を承継した後において支給されるもの …… 雑所得

2 使用人等が取得した特許権等について権利を設定したことにより支給する場合
 
 役員又は使用人が取得した特許権、実用新案権や意匠権について通常実施権又は専用実施権を設定したことにより支給されるもの …… 雑所得
 なお、この場合の特許権等の使用料は、源泉徴収の対象となる報酬・料金に該当するため、支給するとき10.21%(1回に支払う金額が100万円を超える場合には、その超える部分については、20.42%)の源泉徴収が必要です。

3 特許等を受けるまでには至らない発明や工夫に対して支給する場合
 
  社内提案制度等において、事務や作業の合理化、製品の品質の改善や経費の節約等に寄与する工夫、考案等をした人に対して支給される場合には、次のように取り扱われます。

(1) その工夫、考案等がその人の通常の職務の範囲内である場合…… 給与所得

(2) 通常の職務の範囲外である場合で、一時に支給されるもの …… 一時所得

(3) 通常の職務の範囲外である場合で、その工夫、考案等の実施後の成績等に応じ継続的に支給されるもの …… 雑所得

4 災害防止等の功績により一時に支給する場合

 災害等の防止又は発生した災害等による損害の防止等に功績のあった人に一時に支給する場合には、次のように取り扱われます。

(1) その防止等がその人の通常の職務の範囲内である場合 …… 給与所得
  例えば、災害の防止等を本来の職務とする守衛等に、その防止等の功績に
  対してして支給する場合には、給与所得(賞与)となります。

(2) その防止等が通常の職務の範囲外である場合 …… 一時所得

5 篤行者として社会的に顕彰され使用者に栄誉を与えた人に一時に支給する場合
 
 人命救助等の篤行により社会的に顕彰され、使用者に栄誉を与えた人に一時に支給されるもの …… 一時所得



3.特許法改正に伴う税務上の留意点

 平成28年4月1日より改正特許法が施行され、職務発明制度の見直しが行われました。
 この改正では、契約や職務発明規程その他の定めにおいて特許を受ける権利を発生時から法人に帰属させること(使用者原始帰属制度といいます。)を定めることが可能となり、発明者である従業者は、相当の金銭その他の経済的利益を受ける権利を有することとなりました。

 この場合において、法人が職務発明を行った従業者に対して支払う報償金等は、次の理由により雑所得に該当することとされました。

・特許を受ける権利は発生時から法人に帰属しており、法人へ権利を移転するものではないため、譲渡所得に該当しない。

・法人の従業者としてではなく、発明者としての地位に基づき受け取る経済的利益であるため、給与所得に該当しない。

・あらかじめ職務発明規程等の定めにより特許を受ける権利を法人へ原始的に帰属させることにより生じるもので、臨時・偶発的な所得ではないため、一時所得に該当しない。

 したがって、この場合の報償金等は、所得税法第204条に規定されている報酬・料金等ではありませんので、源泉徴収は不要です。

 ただし、法人があらかじめ職務発明規程等で使用者原始帰属制度を定めていないのであれば、特許を受ける権利は従来どおり従業者(発明者)に帰属するため、その報償金等についての税務上の取扱いは、上記2に従い、それぞれの具体的内容により所得区分を判断することとなります。

【参考文献】

・国税庁 タックスアンサー -源泉所得税-特殊な給与 分類コード2592
 「使用人等の発明に対して報償金などを支給したとき」

・経済産業省 特許法等の一部を改正する法律の概要 平成27年7月
 「2.法律改正の概要」

・国税庁 文書回答事例-所得税 平成29年1月27日 名古屋国税局審理課長
 「職務発明による特許を受ける権利を使用者に原始的に帰属させる制度を導入した場合の『相
 当の利益』に係る税務上の取扱いについて」

                            ( 斎藤総合税理士法人  坂 寄  隆 )

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