2017/03/29

決算留意事項 5

 3月の学校会計のチカラ最終週は、先週に引き続き注記事項を取り上げます。新しく導入された有価証券の明細に関する注記と学校法人間の取引に関する注記を考えていきます。また、各計算書類間の関連性をまとめた表を最後に掲載していますので、計算書類作成時の参考にご利用ください。

1.貸借対照表末尾の注記事項
(1)その他財政及び経営の状況を正確に判断するために必要な事項
 平成17年に改正された学校法人会計基準では、「その他財政及び経営の状況を正確に判断するために必要な事項」の内容として、次の9項目を注記することが示されています。
  ① 有価証券の時価情報
  ② デリバティブ取引
  ③ 学校法人の出資による会社に係る事項
  ④ 主な外貨建資産・負債
  ⑤ 偶発債務
  ⑥ 所有権移転外ファイナンス・リース取引
  ⑦ 純額で表示した補助活動に係る収支
  ⑧ 関連当事者との取引
  ⑨ 後発事象
 これに対して、平成25年改正の学校法人会計基準では、上記9項目に加えて、⑩「学校法人間の財務取引」の合計10項目が示されています。また、①「有価証券の時価情報」の注記を強化しました。以下に、改正箇所に関する注記例を示しますので、注記作成時の参考にご利用ください。

(2)有価証券の時価情報の注記例
【注記例】
① 総括表                                    (単位:円)
 
   当年度(平成××年331日)
貸借対照表計上額
時価
差額
時価が貸借対照表計上額を超えるもの
×××
×××
×××
(うち満期保有目的の債券)
(××)
(××)
(××)
時価が貸借対照表計上額を超えないもの
×××
×××
×××
(うち満期保有目的の債券)
(××)
(××)
(××)
合計
×××
×××
×××
(うち満期保有目的の債券)
(××)
(××)
(××)
時価のない有価証券
××
 
有価証券合計
×××

② 明細表                                    (単位:円)
種類
当年度(平成××年331日)
貸借対照表計上額
時価
差額
債券
×××
×××
()×××
株式
×××
×××
()×××
投資信託
×××
×××
()×××
貸付信託
×××
×××
()×××
その他
×××
×××
()×××
合計
×××
×××
×××
時価のない有価証券
××
 
有価証券合計
×××


平成25年改正の学校法人会計基準では、②明細表が新たに追加されました。近年の金融商品の多様化により、学校法人の資産運用リスク情報に重要度が増しています。そこで、学校法人ではどのような有価証券を保有して、また、時価と簿価の差額について種類別に計算した結果を注記することになりました。これにより、金融商品に関するより詳細な情報が計算書類に開示されることになります。学校経営の観点からは、どのような種類の金融商品を保有して時価と簿価の差額がいくらなのかを把握する資料に利用できるため、リスク管理の強化につながると思われます。

(3)学校法人間の取引の注記例
【注記例】   学校法人間取引の内容は、次のとおりである。

学校法人名
住所
取引の内容
取引金額
勘定科目
期末残高
関連当事者
○○学園
東京都
○○区
資金の貸付
利息の受取
(注1
100,000,000
1,000,000

短期貸付金
50,000,000
●●学園
 
大阪府
○○市
債務保証
(注2)
50,000,000
×××
 
(注1) ○○学園に対する資金の貸付については、市場金利を勘案して利率を合理的に決定している。
    なお、担保は受け入れていない
(注2) ●●学園の銀行借入(50,000,000 円、期限5年)につき、債務保証を行ったものである。
    保証料は受領していない。なお、「取引金額」は、新たに保証を設定した金額である。

 近年、学校法人間で資金貸付や保証等の取引が行われる事例が見受けられます。これらの情報を透明性するために、重要性がある場合は計算書類に注記します。ここでいう重要性の判断は、各学校法人の規模等を踏まえて決定することになりますが、毎期継続適用することが求められます。
 たとえば、事業活動収入計の100分の1(その額が500万円を超える場合は500万円)を超える取引が注記対象とするなどの基準が考えられます。

2.各計算書類の関連性
 
 来週からは新学期がはじまります。そして、都道府県知事所轄の学校法人では、新しい学校法人会計基準適用初年度の決算業務をむかえます。今月の学校会計のチカラで取り上げた事業活動収支計算書及び活動区分資金収支計算書は、初めて作成することになるため、疑問点が多いと思います。これまでに公表された文部科学省のホームページ情報や専門家への相談、専門書籍(下記記載の参考文献等)、を参考にして決算を進めていただきたいと思います。
 なお、資金収支計算書表示の科目の多くは、他の計算書類の金額と一致するという特性があるため、各計算書類間で金額の差異がないか確認を行い、差異が生じている場合はその原因追究を検証することが大切です。
 計算書類の作成後、次の表の関連性を参考に各項目の金額が一致しているか、差異が生じている場合はその理由は何か、最終確認することをお勧めします。


 

【参考文献等】
・学校会計入門  (中央経済社、齋藤力夫)
・学校法人会計のすべて  (税務経理協会、齋藤力夫)
・25高私参第8号「学校法人会計基準の一部改正に伴う計算書類の作成について(通知)」(平成25年9月2日)
・学校法人委員会研究報告第16 号「計算書類の注記事項の記載に関するQ&A」(平成26年12月2日)


公認会計士 佐 藤 弘 章

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