2016/11/09

事業報告書について 2

 今週も事業報告書について解説していきます。平成25年の学校法人会計基準の改正により計算書類の注記内容が拡充されましたが、合わせて事業報告書の記載内容も追加されています。

Ⅰ.平成25年の会計基準改正後の事業報告書
 平成25年に学校法人会計基準が改正され、学校法人が作成する財務諸表や収支計算書の項目が変更され、活動区分資金収支計算書が新設されました。また、計算書類の末尾に記載する注記の内容が拡大・充実化し、学校法人の継続性を担保するため第4号基本金に相当する資産の有無や、学校法人間の取引の注記が追加されました。
 以下では、日本公認会計士協会が公表している「学校法人における事業報告書の記載例について」(学校法人委員会研究報告第12号)をもとにして、改正後の会計基準に基づいて事業報告書を作成するときの留意点や記載内容の変更点についてみていきます。

Ⅱ.改正後会計基準による事業報告書作成上の留意事項
1.経年比較
 改正後の会計基準では、資金収支計算書を組み替え表示する活動区分資金収支計算書が新たに導入されたほか、事業活動収支計算書や貸借対照表に表示される項目の一部も変更されました。そのため、財務の概要において、事業活動収支計算書や貸借対照表の経年比較をする場合には、以下のいずれかの方法により記載することになります。
 ・ 改正前の会計基準により作成された計算書類の項目と改正後の会計基準による計算書類の項目を
  並べて表示する方法
 ・ 改正前の会計基準により作成された計算書類の項目を改正後の様式に組み替えて表示する方法
 改正前の会計基準による計算書類の項目と改正後の会計基準によるものを並べて表示する場合には、それぞれを別の経年比較表として作成するなど、事業報告書の利用者の誤解を招かないような工夫が必要でしょう。また、改正前の会計基準による計算書類の項目を改正後の様式に組み替えて表示するときには、経年比較表の脚注において、表示する項目の組み換え内容を記載することが望ましいでしょう。
 なお、会計基準の改正に伴い、日本私立学校振興・共済事業団から「学校法人会計基準改正に対応した新たな財務比率等について」が公表されています。財務の概要において、財務比率の経年比較を行う場合にも、改正前の財務比率と改正後の財務比率のいずれを使用しているかを分かりやすく記載するのが望ましいです。

2.改正後の会計基準で追加された注記事項
(1) 第4号基本金相当の資金を有してない場合
 改正後の会計基準では、会計年度の末日において第4号基本金に相当する資金を有していない場合には、その旨及び当該資金を確保するための対策を脚注に記載するものとされました(改正後基準第34条第7項)。そのため、改正後の会計基準が適用される学校法人において、年度末の現金預金やその他支払資金と同様に使われている資金の額が第4号基本金の金額を下回るときには、計算書類の末尾の注記において、保有する資金の内訳及びその残高や資金を確保するための対策を記載することになります。
 上記改正を受けて、研究報告第12号では、学校法人が会計年度の末日において第4号基本金に相当する資金を有していない場合に、事業報告書の「事業の概要」に「対処すべき課題」等の区分に、その旨と今後の対応方針を記載するものとしています。
 具体的な例示は以下のとおりです。

 【例】 当学校法人は当該会計年度の末日において第4号基本金に相当する資金を有していない。
  第4号基本金       ○○千円
  第4号基本金に相当する資金       ○○千円
 今後の対応方針等は以下のとおりである。
 現在、主要な債権者である○○等と協議の上、平成○年度から平成○年度までの経営改善計画を作成し、○○等の経営改善に向けた活動を行っている。

(2) 学校法人間取引の注記
 改正後の会計基準では、計算書類の末尾に「その他財政及び経営の状況を正確に判断するために必要な事項」として、学校法人間における貸付、債務保証等の取引を注記し、学校法人の財務の概要において事業活動収支計算書や貸借対照表の経年比較をする場合に、経営状況や財政状態についてより透明性を高めることとしています。
 事業報告書では、学校法人間の取引について、取引相手となる学校法人の名称、住所、取引の内容を記載することになります。また当該学校法人との間で役員が兼務している等、補足すべき事項があるときには、摘要欄に記載することになります。
 具体的な例示は以下のとおりです。

 【例】 学校法人間取引
 学校法人名    住  所     取引の内容  摘 要
○○学園 東京都○○区 資金の貸付 〇千円    
□□学園 大阪府□□区 債務保証   〇千円   
 
 第4号基本金に相当する資金に関わる注記の方法や学校法人間の取引の範囲については、日本公認会計士協会から「『学校法人会計基準の一部改正に伴う計算書類の作成について(通知)』に関する実務指針(学校法人委員会実務指針第45号)が公表されています。計算書類の注記の詳細については、実務指針が参考になります。

(公認会計士 大 島 隆 光)
 

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