2016/11/16

事業報告書について 3

 今週は事業報告書の財務の概要に記載する財務比率についてのお話しです。 

Ⅰ.平成25年の学校法人会計基準の改正に伴う変更点
 平成25年の学校法人会計基準の改正により、学校法人が作成する計算書類の内容や表示項目などが変更され、これまで学校経営の財務分析に使用されていた財務比率も改正後の会計基準に対応したものに変更されました。以下では、日本私立学校振興・共済事業団が公表している「学校法人会計基準改正に対応した新たな財務比率等について」を参考にして、学校経営における財務比率の扱いについて解説していきます。

Ⅱ.改正後の財務分析のポイント
 今回の会計基準の改正により、資金収支計算書の項目を組み替えて作成する活動区分資金収支計算書が新たに計算書類に加わりました。活動区分資金収支計算書は、「教育活動による資金収支」、「施設整備等活動による資金収支」、及び「その他の活動による資金収支」に区分して作成され、企業会計のキャッシュ・フロー計算書の枠組みに類似するものとなりました。
 また事業活動収支計算書は、「教育活動」、「教育活動以外の経常的な活動」、及び「前記2つの活動以外の活動」の各活動区分ごとの収支を明確に表示するものとなりました。このように、改正後の会計基準は一定の区分ごとに収支計算をすることで、より学校法人の経営状況が理解しやすくなると考えており、財務比率による分析をするときの基本的な視点を提供しています。

Ⅲ.事業活動収支計算関係
 事業活動収支計算に関係する財務比率は、改正前の会計基準で使用されていた帰属収入に代えて、経常収入を用いた指標となっています。従来の帰属収入には、施設設備に関する寄付金や補助金、資産売却差額等の臨時的な収入が含まれていましたが、新会計基準の経常収入は臨時の項目の影響が除かれています。
 以下では、新設された財務比率を用いて、改正後の分析のポイントをみていきます。

1.経常収支差額比率
 経常収支差額比率は、以下の算式で計算されます。なお、経常収入は改正前の会計基準で使用されていた帰属収入から特別収入を控除した金額となります。
   経常収支差額
   経 常 収 入
 経常収支差額比率は、経常的な収支のバランスを表す比率であり、臨時的な収支の影響を除いた財務比率です。改正前の会計基準の下では、帰属収支差額比率を用いて収支の状況を分析することがありましたが、施設等の処分や有価証券の売却に伴う処分差額が発生すると経年比較することが困難となることがありました。経常収支差額比率は、経営の健全性を表す代表的な財務比率であり、中長期的に収支が均衡し安定運営がなされているかを判断する指標となります。
 

2.教育活動収支差額比率
 教育活動収支差額比率は、以下の算式で計算されます。

 教育活動収支差額
 教育活動収入計 
 教育活動収支差額比率は、学校法人の本業である教育活動の収支バランスを表す比率です。教育活動による収支差額が教育活動収入に占める割合であり、教育研究活動を行うための主な財源となる学生生徒等納付金や補助金収入等にどの程度の余裕があるかを表す指標となります。
 教育活動収支差額比率が高いほど、教育研究活動を支える施設整備等への資金が充実していることになります。一方で、教育活動収支差額比率が低下傾向であるときやマイナスが続いてときには、将来的に安定して教育研究活動を行っていくための財源が十分に確保できていない可能性があります。

Ⅳ.貸借対照表関係

 平成26年の会計基準の改正により、貸借対照表の中科目として特定資産の区分が設けられ、特定の目的のために積み立てる「退職給与引当特定資産」や「基本金引当特定資産」等が区分掲記されることになりました。また、学校法人が保有する資産の調達源泉を明確にするため、改正前の「基本金の部」と「消費収支差額の部」を合わせて「純資産の部」に変更されました。
 以下では、貸借対照表関係の新たな財務比率である積立率をみてみます。

1.積立率
 
積立率は以下の算式で計算されます。
  運 用 資 産
  要 積 立 額
 積立率の分子である運用資産は、貸借対照表の現金預金、有価証券、及び特定資産を合計したものです。改正前の会計基準による財務比率では、運用資産がその他の固定資産及び流動資産の合計額とされていましたので、改正後の財務比率では運用資産に含まれる項目が限定されることになります。また、分母の要積立額は、減価償却額累計額、退職給与引当金、第2号基本金、及び第3号基本金の合計額です。
 積立率は、学校法人が保有している施設設備を更新するための資金や教職員の退職金支給に対して、どの程度の資金的な準備ができているかを表しています。ただし、施設設備の老朽化の状況や教職員の年齢構成は学校法人ごとに異なるものであり、個々の学校法人の状況に照らして、積立率の適否をみていく必要があります。

(公認会計士 大 島 隆 光)

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