2016/02/03

実地棚卸について

 今回は、学校法人における実地棚卸について検討しましょう。なお、文中意見にわたる部分は筆者の私見であることをお断りしておきます。

 学校法人では、学生生徒等に対する教育サービスの一環として購買部等で筆記用具やノート等の文房具、制服・ブラウス等の衣料を販売している場合があります。「小規模法人における会計処理等の簡略化について(報告)」について(通知)(文管振第87号 昭和49年3月29日)によれば、都道府県知事所轄の学校法人においては、その事務体制等の実態にかんがみ、学校法人会計基準の要請する基本的事項を逸脱しない範囲内において、「販売用文房具、制服等の購入支出については、当該物品を購入した会計年度の消費支出として処理することができる。ただし、会計年度末において当該物品の有高が多額である場合には、当該有高を消費支出とすることなく、流動資産として貸借対照表に計上処理しなければならない。」とされています。
この点、「多額である場合」とは、具体的にどのような場合であるのか通知では明らかにされていません。多額の概念は各学校法人の規模によって様々な解釈があると考えられますが、例えば流動資産の1/100を超える場合や会計年度末において販売用品の総有高が100万円を超える場合には、「多額である場合」と判断しても良いでしょう。なお、最終的には会計監査を担当する公認会計士等と相談してください。

 文房具や衣料等の販売用品を会計年度末に流動資産として貸借対照表に計上するためには、各販売用品の数量と単価を決定することが必要になります。ここで、販売用品の数量を把握するための手段として実地棚卸が登場します。また、実地棚卸は数量を確定するために行われるほか、利益を確定するためにも行われます。営利企業では、実地棚卸は専ら利益を確定するために行われますが、学校法人では営利企業ほど多額に販売用品を保有しておらず、購買部等による物品の販売は主に学生生徒等に対する教育サービスの一環として行っているため、実地棚卸は専ら数量管理のために行われるものと考えられます。この点、学校法人では販売用品の払い出しの都度、台帳に出庫数量を記録し、日常的に販売用品の数量を把握している場合があるため、実地棚卸は必要ないのではないかと考える方もいるでしょう。
 しかしながら、それはあくまで台帳上の数量であって、必ずしも実際の数量と一致しているとは限りません。そのため、実地棚卸を行うことによって、台帳上の数量と実際の数量を比較し、差異があればその原因を調査し、解消することが求められるのです。さらに、実地棚卸では経年劣化等により、販売することが出来ない物品を把握したり、何らかの原因により台帳に記載されていない物品を発見することも可能です。
 したがって、実地棚卸を行う際には、(台帳があれば)台帳に記載されている数量が正確かどうか検証するほか、当該物品は販売することができるかどうか、台帳からもれている物品がないかどうか等も併せて検討すると効率的です。また、実地棚卸は、1人で行うよりも2人で行った方が相互牽制が働き、カウントミスや記入ミスを防ぐためにも有効でしょう。
 なお、実地棚卸は販売用品についてのみ行われるものと誤解されがちですが、備品や図書についても適用が可能です。備品や図書についても定期的に実地棚卸を行うことによって、固定資産台帳や図書台帳に登録されているものの、その所在が不明となっているモノを把握することが出来ます。また、機器の故障や図書の汚れ・破れ等使用に耐えないをモノを把握するためにも有効です。

 次に会計年度末に販売用品を流動資産として貸借対照表に計上するためには数量のほかに単価を決定することが必要ですが、単価は以下のような方法によって計算されます。

















      学校法人会計基準では具体的な計算方法は明らかにされていませんので、上記いずれの方法も認められますが、いったん採用した計算方法は、継続して適用し、正当な理由なくみだりにこれを変更してはいけません。具体的な計算方法は、一般の簿記の教科書を参照してください。
なお、学校法人では、通常、会計年度末においてそれほど多額に販売用品を保有しているケースは少ないと考えられますので、仮に販売用品を貸借対照表に計上する場合でも、最も簡便的な計算方法である最終仕入原価法で計算すれば十分でしょう。

                            (公認会計士 芦 澤 宗 孝)


 

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