2015/11/04

合併について(その1)


 わが国の学校法人を取り巻く経営環境は出生数の減少に伴い学齢人口も減少しつつあり、年々厳しいものとなっています。以下は、1947年から2014年までの出生数(左軸)を棒グラフに、合計特殊出生率(一人の女性が一生に産む子供の平均数)を折れ線グラフに(右軸)に示したものです。

                              (出典:厚生労働省 人口動態調査より)

 出生数は1973年の209万人をピークに年々減少傾向にあり、直近の2014年では100万3,539人とかろうじて100万人を維持しました。また、合計特殊出生率は1967年からなだらかに減少してきましたが、2006年から団塊ジュニア世代の出産時期と重なり、いったんは上昇に転じました。しかしながら、2014年は9年ぶりに前年比を0.01ポイント下回り1.42となりました。人口維持のために必要な合計特殊出生率は約2.07~2.08とされることから、今後わが国は超高齢化・人口減少の時代へと進んでいくことになります。
 このような中、以下のとおり、近年学校法人においては生き残りをかけた戦略的な合併が行われるようになってきました。

 近年の学校法人による合併は、建学の精神等を同じくする法人間の合併のほか、学部等に補完関係のある大学間同士の水平型の合併や大学設置法人と高校設置法人の合併等垂直型の合併が行われています。また、知事所轄法人間による合併も見受けられるようになってきました。したがって、今回は改めて学校法人の合併について、私立学校法による手続面と会計処理について、2回に分けて検討していきたいと思います。なお、文中意見にわたる部分は筆者の私見であることをお断りしておきます。

 私立学校法では、学校法人が合併をするにあたっては、まず、当事者となる学校法人全てで理事会を開催し、理事の3分の2以上の同意を得ることが必要です。ただし、寄附行為で評議員会の議決を要するものと定められている場合には、さらに評議員会の議決も必要となります(52条)。また、合併は所轄庁に所定の書類を提出し、その認可を受けなければその効力は生じません(同2項)。所轄庁への主な提出書類については、私立学校法施行規則第6条、「学校法人の寄附行為等の認可申請に係る書類の様式等(平成6年文部省告示第117号)」及び「学校法人の寄附行為の認可及び寄附行為変更の認可申請書類の作成等に関する手引き」に以下のとおり定められておりますのでご確認ください。


1. 認可申請書(様式第1-4号)
2. 理由書
3. 当該学校法人の概要を記載した書類(様式第2-2号)
4. 役員に関する書類(様式3号)
5. 当該学校法人の事務組織の概要を記載した書類(様式第5号)
6. 私立学校法第52条第1項に規定する手続(同法第42条に規定する手続を含む。)を経たことを証する書類
7. 私立学校法第55条の場合においては,申請者が同条の規定により選任された者であることを証する書類
8. 合併契約書
9. 存続学校法人の寄附行為
10. 合併前の学校法人又は準学校法人の寄附行為
11. 存続学校法人又は設立学校法人の設置する私立学校の学則
12. 財産目録その他の最近における財産の状況を知ることができる書類(様式第6号)
13. 合併前の学校法人又は準学校法人の貸借対照表
14. 不動産の権利の所属についての登記所の証明書類等
15. 不動産その他の主なる財産については,その評価をする十分な資格を有する者の作成した価格評価書
16. 2年間の事業計画及びこれに伴う予算書(様式第7号)
17. 校地校舎等の整備の内容を明らかにする図面
18. その他(パンフレット等、参考となる書類)
19. 事務担当者連絡票

 学校法人は、所轄庁の認可があったときは、その認可の通知のあった日から2週間以内に、財産目録及び貸借対照表を作らなければならず(第53条第1項)、前項の期間内に、その債権者に対し異議があれば一定の期間内に述べるべき旨を公告し、かつ、判明している債権者に対しては、各別にこれを催告しなければならないとされています。これは、合併は、学校法人の解散を伴うものなので(第50条第1項第4号)、学校法人の債権者を保護するために必要な手続です。なお、準学校法人の合併についても同様です(第64条第5項、同法施行規則第8条)。また、学校法人の合併は、合併後存続する学校法人又は合併によって設立する学校法人の主たる事務所の所在地において政令の定めるところにより登記をすることによって効力を生じます。(同57条)。寄附行為の変更に伴い,組合等登記令第3条に基づく登記の変更及び私立学校法施行規則第13条第2項に基づく届出が必要となりますので、登記事項証明書(登記簿謄本)、変更後の寄附行為及び事務担当者連絡票を添えて所轄庁宛に届け出ることが必要です。

 学校法人の合併手続は、上記のとおり様々な手続を得る必要があり、合併契約書の締結から登記の完了まで1年以上かかる場合も少なくありません。プロジェクトのメンバーはその間所轄庁への届出や規程の改廃を含め、内外の様々な作業に追われることになります。特に給与や退職金規程等に大きな乖離があった場合、不利益を被る教職員への十分な配慮が必要であり、数年をかけて徐々に給与水準等を合わせていく激変緩和措置も必要になってくるでしょう。なお、学校法人の規程に関しては、「学校法人財務諸規程ハンドブック」(学校経理研究会発行 永和監査法人会長 公認会計士 齋藤力夫編著)が詳細に記載されていますので、参考にしてください。

 最後に、学校法人を取り巻く経営環境は少子化による学齢人口の減少に伴い、年々厳しくなることが想定されます。したがって、学校法人では将来を見据え今後合併を選択する機会が増えてくるでしょう。ただし、合併は1つの手段であり、合併を成功に導くためには、理事会の強力なリーダーシップのもと教職員が将来の学校法人のビジョンを共有し、学生生徒等に対する教育サービスをさらに充実させていく強い意思が求められることになるでしょう。

                                                     (公認会計士 芦澤 宗孝)

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