2018/01/17

学校法人の内部統制について(その2)


 前回は、日本公認会計士協会より公表されている「学校法人の内部統制について」(昭和42年5月19日 学校会計委員会報告第1号)をもとに、営利企業における内部統制の定義を参考にしながら、学校法人における内部統制の必要性や内部統制制度の確立について解説しました。今回は、具体的に内部統制の4つの目的や6つの基本的要素について、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」(最終改正平成23年3月30日 企業会計審議会 以下、「基準」といいます。)を参考にしながら解説します。なお、文中意見にわたる部分は筆者の私見であることをお断りしておきます。


 前回、基準では、内部統制には以下の①~④の4つの目的があり、内部統制とは、これら4つの目的が達成されているとの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内のすべての者によって遂行されるプロセスであり、以下の㋐~㋕の6つの基本的要素から構成されることを紹介しました。

 <内部統制の目的>
①業務の有効性及び効率性
②財務報告の信頼性
③事業活動に関わる法令等の遵守
④資産の保全

 内部統制の4つの目的のうち、①業務の有効性と効率性とは、事業活動の目的の達成のため、業務の有効性及び効率性を高めることをいいます。また、②財務報告の信頼性とは、財務諸表及び財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性のある情報の信頼性を確保することをいい、③事業活動に関わる法令等の遵守とは、事業活動に関わる法令その他の規範の遵守を促進することをいいます。さらに、④資産の保全とは、資産の取得、使用及び処分が正当な手続及び承認の下に行われるよう、資産の保全を図ることをいうとされています。なお、内部統制の目的はそれぞれに独立していますが、相互に関連していると考えられています。

<内部統制の基本的要素>
㋐統制環境
㋑リスクの評価と対応
㋒統制活動
㋓情報と伝達
㋔モニタリング(監視活動)
㋕ITへの対応


 内部統制の基本的要素とは、内部統制の4つの目的を達成するために必要とされる内部統制の構成部分をいい、内部統制の有効性の判断の規準となります。このうち、
㋐統制環境とは、組織の気風を決定し、組織内のすべての者の統制に対する意識に影響を与えるとともに、他の基本的要素の基礎をなし、㋑リスクの評価と対応、㋒統制活動、㋓情報と伝達、㋔モニタリング及び㋕ITへの対応に影響を及ぼす基盤をいいます。

㋑リスクの評価と対応とは、組織目標の達成に影響を与える事象について、組織目標の達成を阻害する要因をリスクとして識別、分析及び評価し、当該リスクへの適切な対応を行う一連のプロセスをいいます。リスクの評価に当たっては、組織の内外で発生するリスクを、組織全体の目標に関わる全社的なリスクと組織の職能や活動単位の目標に関わる業務別のリスクに分類し、その性質に応じて、識別されたリスクの大きさ、発生可能性、頻度等を分析し、当該目標への影響を評価します。

㋒統制活動とは、理事者の命令及び指示が適切に実行されることを確保するために定める方針及び手続をいいます。統制活動には、権限及び職責の付与、職務の分掌等の広範な方針及び手続が含まれます。このような方針及び手続は、業務のプロセスに組み込まれるべきものであり、組織内のすべての者において遂行されることにより機能します。

㋓情報と伝達とは、必要な情報が識別、把握及び処理され、組織内外及び関係者相互に正しく伝えられることを確保することをいいます。組織内のすべての者が各々の職務の遂行に必要とする情報は、適時かつ適切に、識別、把握、処理及び伝達されなければなりません。また、必要な情報が伝達されるだけでなく、それが受け手に正しく理解され、その情報を必要とする組織内のすべての者に共有されることが重要であり、一般に、情報の識別、把握、処理及び伝達は、人的及び機械化された情報システムを通して行われます。

㋔モニタリングとは、内部統制が有効に機能していることを継続的に評価するプロセスをいいます。モニタリングにより、内部統制は常に監視、評価及び是正されることになります。モニタリングには、業務に組み込まれて行われる日常的モニタリング及び業務から独立した視点から実施される独立的評価があり、両者は個別に又は組み合わせて行われる場合があります。

㋕ITへの対応とは、組織目標を達成するために予め適切な方針及び手続を定め、それを踏まえて、業務の実施において組織の内外のITに対し適切に対応することをいいます。

 内部統制の目的を達成するため、理事者は、内部統制の基本的要素が組み込まれたプロセスを整備し、そのプロセスを適切に運用していく必要があります。それぞれの目的を達成するには、すべての基本的要素が有効に機能していることが必要であり、それぞれの基本的要素は、内部統制の目的のすべてに必要になるという関係にあります。したがって、内部統制は、社内規程等に示されることにより具体化されて、組織内のすべての者がそれぞれの立場で理解し遂行するとともに、内部統制の整備及び運用状況は、適切に記録及び保存される必要があります。

 また、具体的に内部統制をどのように整備し、運用するかについては、個々の組織が置かれた環境や事業の特性等によって異なるものであり、一律に示すことはできませんが、理事者をはじめとする組織内のすべての者が、ここに示した内部統制の機能と役割を効果的に達成し得るよう工夫していくことが望まれます。

 なお、内部統制は、次のような固有の限界を有するため、その目的の達成にとって絶対的なものではありませんが、各基本的要素が有機的に結びつき、一体となって機能することで、その目的を合理的な範囲で達成しようとするものである点に留意が必要です。
イ) 内部統制は、判断の誤り、不注意、複数の担当者による共謀によって有効に機能しなくなる場 合がある。
ロ) 内部統制は、当初想定していなかった組織内外の環境の変化や非定型的な取引等には、必ずしも対応しない場合がある。
ハ) 内部統制の整備及び運用に際しては、費用と便益との比較衡量が求められる。
ニ) 理事者が不当な目的の為に内部統制を無視ないし無効ならしめることがある。

                                          以 上

                                 永和監査法人
                                  公認会計士 芦澤 宗孝




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