2016/12/07

活動区分資金収支計算書の作成上の留意点 1

 今週からは4回に分けて、活動区分資金収支計算書について解説していきます。活動区分資金収支計算書は、昨年度(平成27年度)から文科省所轄学校法人では、先行して計算書類においてその作成が義務付けされました。平成28年度からは都道府県知事所轄学校法人においてもその作成が求められるケースがありますので、その作成上のポイントは是非押さえておきたいものです。


1 活動区分資金収支計算書とは

 平成25年改正学校法人会計基準適用により、資金収支計算書について、新たに活動区分ごとに資金の流れがわかる「活動区分資金収支計算書」の作成が求められることとなりました(学校法人会計基準4条、14条の2)。この活動区分資金収支計算書は、「資金収支内訳表」(第二号様式)、「人件費支出内訳表」(第三号様式)に続く資金収支計算書の付表(第四号様式)として位置付けられています。この計算書を作成することで、資金収支計算書では把握できない学校法人における活動区分ごとの資金の流れを表示することができ、ひいては学校法人の財政及び経営の状況を明瞭に開示することができます。
 一方で、すべての学校法人にこの計算書の作成を強制すると、学校法人の事務負担の増加を伴います。そこで、都道府県知事を所轄庁とする学校法人については、この活動区分資金収支計算書を作成しないことができると規定しました(学校法人会計基準37条)。なお、この付表において、部門ごとの内訳表の作成や予算と決算の対比による表示については求められていません。
 
改正学校法人会計基準(一部抜粋)
(計算書類)
第4条 学校法人が作成しなければならない計算書類は、次に掲げるものとする。
  一 資金収支計算書並びにこれに附属する次に掲げる内訳表及び資金収支計算書に 
    基づき作成する活動区分資金収支計算書
    イ 資金収支内訳表
    ロ 人件費支出内訳表
  二 (以下省略)

(活動区分資金収支計算書の記載方法等)
第14条の2 活動区分資金収支計算書には、資金収支計算書に記載される資金収入及び
    資金支出の決算の額を次に掲げる活動ごとに区分して記載するものとする。
  一 教育活動
  二 施設若しくは設備の取得又は売却その他これらに類する活動
  三 資金調達その他前二号に掲げる活動以外の活動
 2 活動区分資金収支計算書の様式は、第四号様式のとおりとする。

(計算書類の作成に関する特例)
第37条 都道府県知事を所轄庁とする学校法人(以下「知事所轄学校法人」という。)は、
   第4条の規定にかかわらず、活動区分資金収支計算書又は基本金明細表(高等学校
   を設置するものにあっては、活動区分資金収支計算書に限る。)を作成しないことが
   できる。  

※37条はあくまでも「できる規定」であるため、都道府県によってはその作成が求められるケースがあります。したがって、活動区分資金収支計算書の作成の要否については必ず所轄庁の指示に従って下さい。

 ≪活動区分資金収支計算書の作成が求められている都道府県の事例≫
北海道:北海道総務部長(学事第1630号 平成28年3月25日)
三重県:平成27年11月6日 健福第16-744号 環生第02-226号
大阪府:大阪府教育長(教私第1375号 平成28年6月3日)


2 活動区分資金収支計算書の導入の背景

 資金収支計算書は、昭和46年の学校法人会計基準制定以来、補助金配分の基礎資料として、また学校法人の予算管理のための手法として会計実務に定着してきました。しかし、1年間の収入と支出の資金の流れを一覧表形式で表示するに過ぎない資金収支計算書では、どのような源泉から資金が調達され、また調達した資金がどのように使用されたかについて詳細な情報が提供されておらず、財務分析上の有用性に欠けています。
 この点、近年、私学を取り巻く経営環境の変化等を受けて公教育を担う学校法人の経営状態について、利害関係者に対し、よりわかりやすく説明できる仕組みとすることが求められています。その利害関係者からの要請が高まってきた背景について、「学校法人会計基準の在り方について 報告書」(平成25年1月31日)において以下3点が挙げられています。

① 近年の施設設備の高度化、資金調達や運用の多様化など、本業の事業活動以外の
 活動が増加していること
② 私立学校を取り巻く経営環境が悪化する中で、学校法人の財政及び経営の状況への
 社会的な関心が高まっている状況にあること
③ 私立学校の特質として、建学の精神に基づき形作られている学園の一員である在学生
 に対し、その精神に基づく教育が提供され続けていくためにどのように取り組みがなされ
 ているのかについて、財務的な観点からもわかりやすく把握できるようにすること

 ①に対しては、当年度にどのような施設設備の購入があったか、財源がどうだったか等を詳細に表示する必要があります。また②に対しては、学校本来の事業である教育活動によりどれだけの収支差額が獲得されたかを表示することで学校経営の安全性に関する情報を提供する必要があります。さらに、③に対しては、学校法人の持続的な経営を可能にするための将来的な資金(例えば、校舎等の取替更新資金)がどのように調達され、また維持されているかを教育活動による資金収支とは区分して詳細に表示する必要があります。
 したがって、学校法人における諸活動を資金の流れに応じて区分表示し、そして、利害関係者に対しその活動区分ごとの資金の流れを詳細に開示するため、3つの活動区分ごとに区分した活動区分資金収支計算書の作成が求められることになったのです。ここでいう「3つの活動区分」は、①教育活動、②施設若しくは設備の取得又は売却その他これらに類する活動(以下略して「施設整備等活動」)、③資金調達その他前二号に掲げる活動以外の活動(以下略して「その他の活動」)であると学校法人会計基準第14条の2に記載されています。


3 3つの活動へ区分する際の基本的な考え方

 活動区分資金収支計算書は、資金収支計算書に記載された決算額を基に、「教育活動」、「施設整備等活動」、「その他の活動」という3つの活動区分に分けて、学校法人全体の活動区分ごとの資金の流れを把握しようという計算書です。ここで3つの活動への区分方法は、どのように行えばよいのでしょうか。
 JICPA学校法人委員会実務指針第45号(「学校法人会計基準の一部改正に伴う計算書類の作成について(通知)」に関する実務指針 平成26年1月14日 以下、「実務指針45号」)によれば、3つの活動へ資金収支項目を区分する際の基本的な考え方として、「施設整備等活動による資金収支」及び「その他の活動による資金収支」については、第8号通知における定義に従って区分して計上し、それ以外の収支を広く「教育活動による資金収支」の活動区分に計上すると解説しています(実務指針45号1-1)。
 すなわち、文部科学省より発出された「学校法人会計基準の一部改正に伴う計算書類の作成について(通知)」(25高私参第8号通知、平成25年9月2日(以下、「第8号通知」という))において、「教育活動による資金収支」は、「施設整備等活動による資金収支」及び「その他の活動による資金収支」を除いたものと示されています(第8号通知Ⅰ2.⑴①)。このように第8号通知では、「教育活動による資金収支」を直接定義することなく、他の2つの活動区分を定義して、これらに当てはまらないものを広く「教育活動による資金収支」に区分するとしています。つまり、「教育活動による資金収支」を消去法的に定義しているといえます。
 このような定義のしかたとなった理由として、学校法人は、設置基準に基づき必要な施設設備等を用意した上で、教育活動を実施する設置主体ですから、学校法人における活動は、基本的には教育活動による収支が中心となるということが挙げられます。そして、教育活動を継続的に実施するためには、施設設備の取替更新や更なる取得といった活動も必要ですから、「施設整備等活動による資金収支」については、「教育活動による資金収支」をインフラ面から支える活動と考えられ、施設設備の拡充等に限定されたものとなります。また、「その他の活動による資金収支」については、第8号通知Ⅰ2.(3)①において、財務活動、収益事業に係る活動、預り金の受払い等の経過的な活動、過年度修正額といった項目を限定列挙しています。したがって、資金収支項目を3つの活動へ区分する際には、計上されている資金収支項目が「施設整備等活動による資金収支」に該当するのか、または「その他の活動による資金収支」に該当するのかをまず検討し、これらに該当しない資金収支項目は、広く「教育活動による資金収支」の活動区分に計上するという基本的な視点をもって活動区分資金収支計算書の作成にあたる必要があります。

【参考】 学校法人会計のすべて・第3版(税務経理協会)


(公認会計士 津 村 玲)

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