2016/07/27

退職給与引当金の計算4

 前回は都道府県別の私学退職金団体と私大退職金財団における具体的な退職給与引当金の計上方法及び交付金等の会計処理と表示について解説しました。本項最終回となる今回は、積立方式を採用する私学退職金団体と比較して計算過程が複雑な私大退職金財団に加入している場合の計算方法について、具体的な計算設例を用いて解説します。また退職給与引当金の算定方法の注記についても解説します。


1.学校法人が私大退職金財団に加入している場合の計算設例 私大退職金財団に加入し、従来、退職給与引当金をいわゆる 50%基準により計上し、変更時差異 5,000 は経過措置により10年間で毎年度均等額を繰り入れるものとします。平成22年度末の期末要支給額を10,000、退職給与引当金の残高を 4,900(10,000×50%-(掛金累積額 200-交付金累積額100))とした場合の退職給与引当金(特別)繰入額又は退職給与引当金戻入額の計算例は以下のとおりです。

(1) 前年度末と当年度末の計算

 

平成22年度

平成23年度

平成24年度

平成25年度

前期末退職給与引当金(調整計算後)

×××

9,900

10,950

10,400

-当年度退職等に基づく取崩額

×

*   100

*   500

 100

差引  ()

×

9,800 

10,450

10,300

期末要支給額

10,000

11,000

10,500

9,950

-掛金累積額

200

250

350

400

+交付金累積額

100

200

250

300

繰入調整額加減後の額 ()

9,900

10,950 

10,400

9,850
 
(2) 繰入額又は戻入額の計算(A)-(B)


()() 退職給与引当金繰入額


* 1,150



()() 退職給与引当金戻入額



*    50

450
 
参考:退職給与引当金(B/S)の金額等


期首退職給与引当金(/)

×××

4,900 

6,450 

6,400

-当年度退職等に基づく取崩額

×

100 

500

100

+当期退職給与引当金繰入額

×

1,150

 

 

-当期退職給与引当金戻入額



50

450

+退職給与引当金特別繰入額 


*   500

*   500

500

期末退職給与引当金(/) 

4,900

6,450 

6,400

6,350

変更時差異の未繰入額

5,000 

4,500

4,000

3,500

以上のとおり、平成 23 年度は以下の処理となり、退職給与引当金の残高は6,450 となります。
*① 年度中に退職した者の退職金支給に基づく取崩し
     (借)退職給与引当金 100 / (貸)退職金 100
*② 年度末の退職給与引当金の繰入れ
     (借)退職給与引当金繰入額 1,150 / (貸)退職給与引当金 1,150
*③ 変更時差異の当年度繰入れ
     (借)退職給与引当金特別繰入額 500 / (貸)退職給与引当金 500
    (注)変更時差異は平成23年度以降10年間、毎期500で均等繰入れします。
 また、平成 24 年度は以下の処理となり、退職給与引当金の残高は 6,400 となります。
*④ (借)退職給与引当金 500 / (貸)退職金 500
*⑤ (借)退職給与引当金 50 / (貸)退職給与引当金戻入額 50
*⑥ (借)退職給与引当金特別繰入額 500 / (貸)退職給与引当金 500

 平成 25 年度においても、平成 24 年度と同様に処理し、退職給与引当金の残高は6,350となります(実務指針第44号1-1)。なお、退職給与引当金特別繰入額は、平成25年会計基準における事業活動収支計算書上、特別収支の部の「その他の特別支出」に計上します。


2.退職給与引当金の算定方法の注記 「会計基準」第34条で「重要な会計方針」を注記することとされ、また文科省第1号通知(平成17年5月13日)において、「重要な会計方針」として引当金の計上基準が挙げられていることから、退職給与引当金の計上基準は必ず記載しなければならない事項の一つです。したがって、通知の有無にかかわらず、毎年度記載する必要があります。
 学校法人の退職金債務は、私学退職金団体及び私大退職金財団からの交付金とのかかわりがあるため、たとえば次のように記載することが望ましいとしています(第11号通知、実務指針第44号、日本公認会計士協会研究報告第16号)。また、特殊な事例の場合は、一般に公正妥当な会計慣行に基づいて記載します。 

(1) 私学退職金団体に加入していない場合の記載例

退職金の支給に備えるため、期末要支給額×××円の100%を計上している。

(2) 私学退職金団体に加入している場合の記載例
 (イ)一般的な記載例


退職金の支給に備えるため、期末要支給額×××円から○○私学退職金団体よりの交付金相当額を控除した金額の100%を計上している。
 
 (ロ)私学退職金団体からの交付金相当額と退職金支給額とが同額である場合の記載例


期末要支給額○○円は、○○私学退職金団体よりの交付金と同額であるため、退職給与引当金は計上していない。

(3) 私大退職金財団に加入している場合の記載例
 (イ)「変更時差異」がない場合の記載例


退職金の支給に備えるため、期末要支給額×××円の100%を基にして私立大学退職金財団に対する掛金の累積額と交付金の累積額との繰入調整額を加減した金額を計上している。
 
 (ロ)「変更時差異」について経過措置を適用している場合の記載例

1.重要な会計方針
 (1) 引当金の計上基準
    退職給与引当金
    退職金の支給に備えるため、期末要支給額×××円の100%を基にして私立大学退職金
    財団に対する掛金の累積額と交付金の累積額との繰入調整額を加減した金額を計上
    している。
    なお、「退職給与引当金の計上等に係る会計方針の統一について」(平成23年2月17日
    付け22高私参第11号文部科学省高等教育局私学部参事官通知)に基づく変更時差異
    ×××円については、平成23年度から○○年で毎年度均等に繰り入れている。

7.その他財政及び経営の状況を正確に判断するために必要な事項
    退職給与引当金の計上
    「退職給与引当金の計上等に係る会計方針の統一について」(平成23年2月17日付け
    22高私参第11号文部科学省高等教育局私学部参事官通知)に基づく変更時差異は
    ×××円、退職給与引当金特別繰入額の累計額は××円、繰入年数は○○年、経過処理
    年数は○年である。

【事業活動収支計算書(消費収支計算書)の末尾の注記】
 退職給与引当金特別繰入額は、「退職給与引当金の計上等に係る会計方針の統一について」(平成23年2月17日付け22高私参第11号文部科学省高等教育局私学部参事官通知)に基づく変更時差異×××円について平成23年度から○○年で均等に繰り入れた額である。  

(4) 私学退職金団体及び私大退職金財団に加入している場合の記載例
 大学及び短大等の教職員に係る退職給与引当金については、大学等の教職員に係る旨及び上記⑶を記載します。また、高等学校以下の教職員に係る退職給与引当金については、高等学校以下の教職員に係る旨及び⑵の(イ)又は(ロ)を記載します。

 (注)各都道府県私学退職金団体は、それぞれの団体の名称を記載することが望ましいですが、注記上、単に「私学退職金団体」と記載しても差し支えありません。

(永和監査法人 公認会計士 津 村  玲)

【参考】 学校法人会計のすべて(第3版)




 
 

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