2015/11/11

合併について(その2)


1.はじめに

 前回は、学校法人の合併について私立学校法を中心に、どのような手続が必要になるのか述べました。そこで今回は主に学校法人の合併に係る会計処理について検討することにします。なお、文中意見にわたる部分は筆者の私見であることをお断りしておきます。学校法人の合併に関する会計処理については、日本公認会計士協会より公表されている「学校法人の合併及び学校の分離に係る会計基準について(中間報告)」(学校法人委員会研究報告第7号 平成16年1月14日)が参考になります(以下、研究報告といいます。)。

 研究報告では、まず、学校法人の合併や学校の分離について意義が述べられています。①合併とは、二つ以上の学校法人が結合して一つの学校法人になることを目的として行われる法人間の行為であり、(ア)既存の学校法人が解散し、新たな学校法人を設立する新設合併と、(イ)既存の学校法人のうち、解散する学校法人と存続する学校法人に分かれる吸収合併があります。一般的に、新設合併により新たに設立された学校法人又は吸収合併により合併後存続する学校法人は、合併によって解散した学校法人の権利義務の一切を承継し債権者保護が図られ、教職員も引き継ぐと考えられています。したがって、一部の債務を除外して引き継ぐといったことは出来ないものと考えられます。


 また、②分離とは、学校法人が設置する学校を他の学校法人の設置下に置くことを目的として行われる行為をいい、(ウ)新たな学校法人の設立を伴う新設分離と、(エ)既存の学校法人間で行われる吸収分離に区分できます。学校の分離については、学校法人の合併(私立学校法第52条)と異なり、私立学校法に特別の定めはありませんが、学校法人の新規設立、学校の設置者変更及び既存の学校の廃止の手続を組み合わせることによって実現できると考えられています。また、分離は合併と異なり個別契約であり、分離する資産負債等は当事者間の個別的な合意によることとなります。なお、分離にあっては学校法人間の意思のみならず、取引先の承認が必要な場合も多いため留意が必要です。



2.会計処理に係る基本的考え方 

 今回は、主に学校法人の合併のうち、実務上比較的一般的にみられる吸収合併に焦点をあて、会計処理を検討することにします。学校法人の合併にあたっては、継承法人(上記の図でE学校法人)が解散法人(上記の図でD学校法人)から資産や負債及び基本金をどのように引き継ぐかがポイントになります。研究報告では、継承法人が解散法人の資産や負債及び基本金を引き継ぐための会計処理として、持分プーリング法とパーチェス法の2つを紹介しています。持分プーリング法とは、合併又は分離される学校法人の帳簿価額をそのまま引き継ぐ会計処理であり、パーチェス法とは、時価によって引き継ぐ会計処理です。研究報告では、学校法人は、寄附行為によって設立されたものであり、いかなるものも所有権を有さないことから、持分がなく議決権の概念がないことをはじめ、いわゆる「合併等の力関係」を示す客観的な基準の判定が困難であることや、公共性の観点から自由な資産の処分が制限されること、設置基準における資産額基準などの問題、基本金との関係等から持分プーリング法及びパーチェス法のいずれの方法が妥当であるとも一概に言えないとし、統一的な処理方法を示してはいません。したがって、実務上は、いずれの方法も採用が可能であると考えられます。以下は、最もシンプルな事例として持分プーリング法による会計処理を示したものです。
 

【設例】 解散法人Dの合併直前の貸借対照表

 
持分プーリング法による継承法人Eによる会計処理


 


3.計算書類における表示等


 計算書類の注記事項については、学校法人会計基準第34条において重要な会計方針など8項目が定められています。学校法人の合併や学校の分離が行われた場合、当該事実を注記しなければならないとする定めはありませんが、合併や分離が学校法人の財政に与える重要性に鑑み、財政及び経営の状況を正確に判断するために必要な事項として注記することが必要と考えられます。また、合併や分離が実行される以前においても、これらの契約等の事実がある場合には、後発事象等として注記することが望まれます。

 固定資産明細表については第八号様式(注)4において、「贈与、災害による廃棄その他特殊な事由による増加若しくは減少があった場合又は同一科目について資産総額の1/100に相当する金額(その額が3,000万円を超える場合には3,000万円)を超える額の増加若しくは減少があった場合には、それぞれの事由を摘要の欄に記載する。」と定めています。 したがって、固定資産増加又は減少の事由が、学校法人の合併又は分離などによる場合には、摘要欄にその事由を記載することが必要となります。なお、その事由に併せ、増加又は減少資産の価額及び減価償却累計額を記載することが望ましいと考えられます。

 借入金明細表については、第九号様式において、固定資産明細表で求めているような、特殊な事由による増減についての注記は求めていません。 しかしながら、借入契約に基づく返済以外の事由による減少などは、学校法人の借入金の増減内容の実態を明瞭に表示する観点から必要と認められる事項を注記することが望ましく、他の学校法人の借入債務引受けにより借入金が発生する場合等、合併又は分離に伴う増減であることが明瞭に判断できるよう、その事由を注記又は摘要欄に記載することが望ましいと考えられます。

 基本金明細表ついては、第十号様式(注)2において、「当期組入高及び当期取崩高については、組入れ及び取崩しの原因となる事実ごとに記載する。」と定めています。したがって、合併又は分離という事実が明瞭にわかるように記載しなければなりません。また、(注)2においては、さらに、「ただし、第3号基本金以外の基本金については、当期組入れの原因となる事実に係る金額の合計額が前期繰越高の100分の1に相当する金額(その金額が3,000万円を超える場合には、3,000万円)を超えない場合には、資産の種類等により一括して記載することができる。」と記載されていますが、合併又は分離という事由の重要性に鑑み、金額の如何を問わず組入れ及び取崩しの原因を記載することが望ましいと考えられます。

                                                   (公認会計士 芦澤 宗孝)






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